監修:府中恵仁会病院

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脳卒中

脳卒中ってどんな病気?

脳卒中とは、脳の血管が破れたり詰まったりすることによって、脳の神経が傷つき、手足が動かなくなったり、
言葉がしゃべれなくなったり、後遺症が残る病気です。
脳の血管が ” 破れる病気 ” と ” 詰まる病気 ” に大別されます。
血管が破れる病気にはくも膜下出血脳出血があり、血管が詰まる病気には脳梗塞があります。

◆脳卒中の症状

脳卒中の症状 めまい、頭痛、しびれ、力が入らないなど軽い症状で始まることもあります。
症状の程度に関わらず、血管が破れたり詰まったりした瞬間から突然症状が始まるのが特徴です。
症状の種類や程度は、障害を受けた脳の神経の部位と範囲によります。
脳からは全身に神経がいっているため、全身にあらゆる症状がでますし、
言語や意識にも影響する場合があります。

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脳卒中の治療と予防

◆脳卒中の治療

脳卒中の治療方法には、内科的な点滴や飲み薬の治療の他に、患部に直接手を加える顕微鏡手術や
内視鏡手術、カテーテルを用いておこなう血管内治療があります。
脳卒中には手術や点滴と同じくらい重要な治療としてリハビリテーションがあります。
リハビリテーションは、新たに出現した障害に対しておこなう機能訓練のことです。
運動、作業、言語など、患者さんの状態に合わせて毎日訓練をしていきます。

脳卒中で緊急治療を必要とするのは、生命の危険が生じている場合と、脳をもとの状態に戻すことができる場合です。具体的には、大きな脳出血により脳幹が圧迫されている場合と、脳の血管が詰まった直後で、
すぐに再開通させれば回復できる場合です。

このようなケースは限られますが、脳卒中が疑われたらできるだけ早く救急車を呼び、脳卒中治療を
専門とする病院に運んでもらう
ことが重要です。
(東京都では脳卒中専門施設の認定制度があり、救急隊は搬送先をすぐに決めることができます)

◆脳卒中の予防

一般的に生活習慣病と言われるものの検査、治療をきちんと行うことが、脳卒中の予防にもつながります。
さらに脳卒中予防のために、専門施設で脳の精密検査をおこなっています。
脳の断面図をとったMRIで、脳梗塞や脳出血の痕が見つかったり、脳の血管をとったMRAで、血管が細く
なったり、動脈瘤ができたり、無症候性の病変が見つかることがあります。
異常が見つかった場合、予防治療や手術をおこなうことがあります。

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くも膜下出血について

“くも膜下出血” という病名は誰もが知っていて、恐ろしい病気というイメージが強いかも知れません。
突然に発症し、多くの患者さんは亡くなってしまいます。助かったとしても、軽い障害のみで社会復帰を果たせるのはごく一部の患者さんです。
ここでは“くも膜下出血”の症状と経過、原因、その治療法と予防法についてお話しします。

◆くも膜下出血の症状と経過

くも膜下出血の症状と経過「バットで殴られたように頭が痛かったんです!」この表現だけが有名で、外来では良く聞く症状となってしまいました。実際には“くも膜下出血”の患者さんは軽い頭痛の場合もありますし、卒倒する場合もあります。頭痛の程度はどうであれ、出血した瞬間に突然痛くなるのが特徴です。

また、痛くなったあとはすぐには軽快しません。首から後頭部の痛みや違和感は続き、吐き気を伴うことが多いです。

“くも膜下出血”の大部分は脳動脈瘤の破裂が原因です。一旦止まった動脈瘤からの出血は再出血を
おこすことが多く、その再出血が致命的となることは少なくありません。
“くも膜下出血”が重症な病気である理由はこれだけではありません。
手術を行なったとしても、出血後2週間くらいは注意が必要で、一時的に脳動脈が細くなる脳血管攣縮
(のうけっかんれんしゅく)という現象がおこり、脳血流は減少し、場合によっては脳梗塞となります。
また“くも膜下出血”によって脳脊髄液の流れが悪くなり、水頭症という状態になることもあります。
徐々に進行する認知症、歩行障害、失禁が特徴的症状です。 さらに、治療経過中には、肝、腎、呼吸器、
循環器、胃腸など、全身の合併症によって状態が悪くなることもあります。

◆くも膜下出血の原因

脳脊髄液 「くも膜」とは脳と脊髄の表面にある膜で、その膜の下に脳脊髄液
流れています。脳脊髄液は脳内の脳室で作られ、脊髄全体に流れ、
脳の表面に回ってから吸収されます。
脳への血液は心臓から2本の内頚動脈、2本の椎骨動脈を通って
供給されます。それら4本の動脈は脳の底部で分岐、合流します。
脳動脈瘤はその血管が分岐するところに発生します。そこはちょうど
脳脊髄液の流れる部分でもあるため、脳動脈瘤が破裂した場合に
「脳脊髄液中への出血」=「くも膜下出血」となるのです。

脳動脈瘤ができる原因はわかっていません。高血圧症、喫煙、遺伝の関与が指摘されています。
なんらかの原因で弱くなった動脈の壁に拍動が絶えまなく伝わることで、徐々に膨らんで瘤になると
考えられています。また、その動脈瘤が破れる原因もわかっていません。

様々な研究により破裂率は年間0.5-2%とされています。瘤が不整形であるもの、大きいものは破れやすい
と報告されていますが、そうでないものも破れることはあります。

◆くも膜下出血の治療法

全身的管理はもちろんですが、主に脳動脈瘤、脳血管攣縮と水頭症に対する治療が重要です。

脳動脈瘤の治療

“くも膜下出血”の治療でもっとも重要なのは、脳動脈瘤からの再出血を防止することです。
現在有効な脳動脈瘤の治療は「脳動脈瘤クリッピング術」「脳動脈瘤コイル塞栓術」(後述)の2種類です。
それぞれに利点と欠点があり、どちらを選択するかは脳動脈瘤の発生部位や形、その他要因を総合的
に判断して決定されます。

脳血管攣縮の治療

出血後2週間くらいの間におこる脳血管攣縮では、脳梗塞の治療薬を点滴したり、脳脊髄液のドレナージ
(チューブを通して排出すること)や、脳脊髄液中に各種薬剤を流す治療が試みられています。
しかし、この脳血管攣縮を完全に防止する手立てはないのが現状です。

水頭症の治療

水頭症では脳脊髄液の流れが障害され、CTで脳室拡大を認めます。
シャント術(脳脊髄液を流すチューブを体内に埋め込む手術)によって状態は改善します。

◆くも膜下出血の予防法

脳動脈瘤 “くも膜下出血”を予防する唯一の方法は、破裂前に脳動脈瘤を診断
し、治療すること
です。

脳動脈瘤の診断

非侵襲的(カテーテルや造影剤を使用しない)MRI装置による脳血管
撮影(MRA)によって、脳動脈瘤の診断が可能です。
MRAで脳動脈瘤が疑われた場合や“くも膜下出血”で発症した
患者さんは、カテーテルを用いた脳血管撮影やCTを用いた三次元
血管撮影など、造影剤を使用して動脈瘤の精密検査を行ないます。

CTやMRIで「脳は問題ない」と言われて安心している方は多いですが、通常の断層撮影で脳動脈瘤は
診断できないため注意が必要です。 脳動脈瘤の診断

脳動脈瘤クリッピング術

開頭術ですが、術中に動脈瘤の壁の様子、血管の様子などを十分に観察できる利点があります。
動脈瘤用の多様なクリップの開発に加え、脳へのダメージを最小限にとどめる顕微鏡手術の技術、
顕微鏡の死角を補う内視鏡の応用などによって、極めて安全に行えるようになっています。
また髪を切ることなく手術は行えるため、破裂前の脳動脈瘤であれば術後1週間で退院可能です。 脳動脈瘤クリッピング術

脳動脈瘤コイル塞栓術

足の付け根の動脈からカテーテルを動脈瘤まで誘導して行ないます。
プラチナ製の柔らかいコイルを動脈瘤内に充填します。
コイルには様々な大きさや長さがあり、十分に充填されるまで何本かのコイルを瘤内に詰めていきます。
開頭の必要がないという利点がありますが、様々な要因でコイル塞栓に適さない動脈瘤もあります。
こちらも破裂前の状態であれば術後1週間以内に退院可能です。 脳動脈瘤コイル塞栓術

◆おわりに

人間ドックや健康診断では、胃癌予防のために侵襲的検査である胃カメラをおこなう時代に、非侵襲的検査で脳動脈瘤が診断できるにもかかわらず、致死率の高い“くも膜下出血”は十分に予防されていません。
今後、一般の人達だけでなく医師の意識の向上によって『“くも膜下出血”は予防する病気』ということ、
『脳動脈瘤の診断が重要』ということが一般的になる日が来るかもしれません。

しかし同時に、手術によって具合が悪くなる患者さんがいたり、放置しても一生破裂しない脳動脈瘤が存在したり、手術の適否を判断するために解らないことが沢山あります。したがって、破裂、未破裂にかかわらず、脳動脈瘤が見つかっても手術をしないで経過観察するという選択肢もあります。

くも膜下出血や脳動脈瘤と診断された場合、手術方法の選択理由、手術で考えうる合併症、手術しない場合の経過など、ご本人とご家族は十分に理解し、治療方針は主治医とよく相談した上で決定してください。

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脳出血について

動脈硬化や加齢で弱くなった脳の細い血管が破れ、脳内に出血する病気です。
出血した部位により症状は様々ですし、出血量により状態も異なります。

◆脳出血の症状

脳から手足につながる神経は、脳幹部分で交差するため、脳の右側の出血では左手足の麻痺やしびれ
が出現します。また、7割以上の患者さんでは言語中枢が左側にあるため、左側の出血では右手足の麻痺やしびれとともに、言語障害が出現することがおおいです。

◆脳出血の治療

出血量が少なければ軽度の障害で、リハビリテーションをしながら血腫の自然吸収を待ちます。
中等量の出血の場合、神経障害に影響が大きければ1週間以内に手術で血腫除去をおこないます。
症状がひどくなければ自然吸収を待つことも可能です。
いずれにしても、リハビリテーションをおこない社会復帰を目指します。

大出血の場合、脳幹の圧迫を伴うことが多く意識障害も引き起こします。早期に手術で血腫除去をおこないますが、広範囲に脳が障害されているため、救命はできても重度の障害が残ることが多いです。

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