心臓から出た血液は、動脈から末梢組織(各臓器)に流れ、静脈血となって心臓にもどってきます。
この一連の流れが障害されることは「心臓血管病」の発症を意味します。
従って、この一連の流れがスムーズに行えるように保つことが、心臓血管病を予防・治療し、健康を維持
することにつながります。
治療法としては
①一般療法(食事療法、運動療法)、②薬物療法、③手術療法などがあげられます。
病態に応じて、各療法単独もしくは組み合わせて、健康を維持してください。
◆心臓疾患
1.虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞症)
2.心不全
3.弁膜症
4.不整脈
などが、代表的心臓疾患ですが、これらの原因となることが多い危険因子
(高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙)を除去することが重要です。
◆動脈疾患
1.閉塞性動脈硬化症
2.大動脈解離・瘤
が代表的な疾患ですが、心臓の危険因子を除去することが肝心です。
◆静脈疾患
下肢(深在)静脈血栓症によって形成された血栓が心臓まで飛んでくると、肺動脈を閉塞してしまいます
(肺塞栓症)。下肢静脈血栓症は、閉塞性動脈硬化症と同様に、皮膚潰瘍の原因となることもありますので、血栓予防のための運動が重要です。
▲このページのトップへ
心血管系の4大危険因子である喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病を取り除くことが必要です。
②高血圧
食事療法によって、塩分制限・カロリー制限を行います。塩分は7g/日が理想ですが、外食の機会があると
どうしても過剰塩分になりがちですので、外食をなるべく減らすことが必要ですが、塩分を減らす食べ方も重要です。肥満があれば、体重を減らすだけで、血圧はある程度下がります。
③脂質異常症
コレステロールは肝臓で合成生成されますので、動物性脂肪を摂取しなくても、上昇します。
すなわち、糖分(果糖を含む)や炭水化物からも合成されますので、一日の総摂取カロリーをコントロール
することが重要です。
④糖尿病
糖尿病も食生活の欧米化によって、増加しています。
高血糖特に食後高血糖は内臓脂肪蓄積を引き起こします。肥満は糖代謝異常を合併しておりますので、
体重を少しでも理想体重に近づけるように、食事・運動療法を施行することが必要です。
◆運動療法の方法
速歩やジョギングなどの有酸素運動(エアロビック運動)がエネルギー消費・心肺機能改善に有効です。
我々の安静時心拍数は60から70毎分ですが、有効な有酸素運動は、心拍数を100毎分前後に保つ運動
をある一定時間持続的に行う運動です。
片道15分間の道のりを往復すると計30分となります。この30分の有酸素運動を一日3回行うのが理想です。
行う時間帯は、食後2時間位ですがですが、特に、とらわれることはありません。
従って、現実的には、普段、仕事をしている場合には、時間的に、一日1,2回が限度かもしれませんが、
続けることが重要です。
運動後は動脈の拡張によって血圧も低下します。下肢筋肉の収縮拡張は静脈内の血流を改善するため静脈内血栓の予防になります。また、下肢筋力増進によって、腰痛・膝痛などの改善・予防にもなります。
運動する場所は、平坦地だけでなく階段や坂なども組み合わせると、全身の筋肉運動となり大変有効です。運動は骨粗鬆症の予防にもなります。
▲このページのトップへ
降圧薬、脂質異常症改善薬(合成阻害薬・吸収阻害薬など)、糖尿病薬、抗不整脈薬、抗血栓・凝固薬、
利尿薬などによる治療です。
薬物は、あくまでも患者さんの治療を補助するためのものです。
運動療法・食事療法をせずに、薬物内服だけ努力しても、根本治療にはなりません。
薬物は病状・四季によって漸増・漸減することが必要ですが、根気よく続けることが必要です。
降圧薬を内服することによって、安心して運動・スポーツ・レジャーと活動することができます。
労作時に血圧がある一定値以上に、上昇するようであれば、薬物を追加する必要があるかもしれません。
薬物は科学的に抽出された純粋な物質ですので、安心して毎日、内服してください。
▲このページのトップへ
循環器内科医による手術と心臓血管外科医による手術が行われています。
患者さんの病状に応じて、手術方法が決定します。
◆循環器内科医による手術
①心臓カテーテルによる治療
・冠動脈形成術(PCI)
カテーテルの挿入は、脚の付け根(鼠径部の大腿動脈)、手首の動脈(橈骨動脈)もしくは肘の動脈
(上腕動脈)から挿入します。狭窄もしくは閉塞病変部位を超音波で検査します。
病変部の性状・血管径が判明しますので、それに適した治療器具(バルーン、ステント、ロータブレーター、
血栓吸引など)で病変部を再開通させます。
手術時間は1時間前後ですが、手首・肘の動脈から治療した場合は、直後から歩行可能です。
・血管形成術(PTA)
肩の動脈(鎖骨下動脈)、腎動脈、骨盤内の動脈(腸骨動脈)、下肢の動脈(大腿動脈、膝下の動脈)
および血液透析用のシャント血管の狭窄・閉塞病変が対象となります。
カテーテルの挿入は、肘もしくは鼠径部の動脈から行います。冠動脈と同様に、超音波検査で病変の性状
を検索し、バルーン、ステントもしくは血栓吸引術で治療します。
手術時間は1時間前後ですが、慢性完全閉塞病変では、2時間近くかかることもあります。
・弁形成術
僧帽弁狭窄症や大動脈弁狭窄症のように狭くなった弁をバルーン(風船)で拡張します。
大動脈弁狭窄症は弁の石灰化に基づくもので、開心術による弁置換術が根治療法ですが、高齢で合併症
がある場合は、姑息的手段ですが、バルーンによる拡張術が施行できます。
方法は、右の鼠径部の静脈から、カテーテルを挿入して、僧帽弁や大動脈弁を拡張します。
手術時間は約2時間です。
②ペースメーカー植え込み術
洞不全症候群や房室ブロックなどの徐脈性疾患では、ペースメーカー植え込み術が必要になります。
ペースメーカーは局所麻酔で、左前胸部もしくは右前胸部に植え込みます。
所要時間は約1時間位で、終了後、歩行可能です。
③カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)
頻脈性不整脈のカテーテルによる根治療法です。主に、右鼠径部の静脈からカテーテルを挿入します。
心房
細動から、心室性不整脈まで治療可能です。手術時間は約2時間です。
◆心臓血管外科による手術
冠動脈バイパス術、弁形成術・弁置換術、大動脈解離・大動脈瘤の手術。